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【実機レビュー】SONY MDR-CD900ST定番スタジオモニターヘッドホンとSONY MDR-Z900比較

MDR-CD900ST MDR-Z900

MDR-CD900STの実機レビューです。SONY MDR-CD900STは業界標準、定番のモニターヘッドホンとされていますが、MDR-CD900STの何が優れているのか、同時代に発売された高級モニターヘッドホンMDR-Z900と比較してみました。

個人的にこれまでMDR-Z900を所有しているので、MDR-CD900STは要らないだろうと思っていましたが、たまたま安く手に入ったのでレビューします。

Contents

SONY MDR-CD900STの機能・特長

MDR-CD900STは、ただのヘッドホンではありません。1988年にソニーのスタジオ、信濃町スタジオモデルとして作られたものが話題となり、以降何十年の間、業務用として販売され続けています。CDが発表された1982年から研究されて来た歴史があります。

MDR-CD900STの音の傾向は固めで、低域、中域、高域と解像度が高く、音像と定位がしっかりとしています。

MDR-CD900STは、業務用ということもあり化粧箱も何の飾りもない、ただの白い箱です。

修理の時は、メーカーではなく直接ソニーミュージックソリューションズに依頼することになります。

SONY MDR-Z900の機能・特長

MDR-Z900は1992年に発売されたモニターヘッドホンです。利用用途がDJなどの業務用に作られているせいか、長時間の使用に耐えられるよう、耳あて部分やヘッドバンド部分も柔らかい素材でできています。

MDR-Z900のケーブルは巻きコードで取り回しも楽です。

SONY MDR-CD900STとMDR-Z900の音比較

SONY MDR-CD900STとMDR-Z900を比較するため、今回もYAMAHA MSP5 Studioの比較と同じく某シンセのデモ音源を使用しました。

シンセのデモ音源のため、特にマスタリングでの味付けがなく、各音域ごとにメリハリがあります。

MDR-CD900STでは、中域と高域の分離感をすごく感じます。さらに中域の中でも各パート毎の音が細かく聴き取れ、情報量の多さを感じました。MDR-CD900STは噂通り、音が刺してくるような印象を受けました。エイジングによって今後変化があるかもしれませんが、長時間の利用には少々辛いかもしれません。

MDR-Z900では、エイジングの影響もあるとは思うのですが、MDR-CD900STほど音の分離感は感じず、良くも悪くも「馴染んでいる」「楽曲としてまとまっている」印象を受けました。

特に低域がMDR-CD900STと全く異なり、MDR-Z900は低域が強調されていますが、解像度の高さ、分離の良さはあまり感じませんでした。

MDR-CD900ST、MDR-Z900のスペック比較

MDR-CD900STの音圧感度は106dB/mW、MDR-Z900は107dB/mWとほぼ同じです。また、MDR-CD900ST、MDR-Z900どちらも再生周波数帯域は5-30000Hz、インピーダンスがMDR-CD900STは63ΩでMDR-Z900は24Ωと異なります。

インピーダンス値が大きいほど限られた電力で音を出すことができるのですが、音質にはあまり影響がありません。インピーダンスの違いについては、MDR-CD900STが電力の少ない過酷な環境でも使われるような想定があるためかもしれません。

MDR-CD900STの接続端子は標準ステレオプラグで、MDR-Z900はミニプラグと、親切に標準変換プラグがあります。MDR-CD900STには変換プラグが必須アイテムです。

MDR-CD900STは華奢?

堅牢そうなMDR-Z900と違って、MDR-CD900STは少々華奢に感じます。軽量なので長時間の利用でも苦痛を感じることはないかもしれませんが、細いケーブルがむき出しでヒンジも細いため、落下して断線やヒンジを壊す可能性はありえると思います。

私のメインヘッドホンはこれまでMDR-Z900だったので、MDR-CD900STは頑丈という方もいらっしゃいますが、写真で見て分かる通り、私は貧弱さを感じました。

一方、MDR-Z900はかれこれ10年以上使っていますが、一向に壊れる気配はありません。きっとこのまま一生使い続けると思います。

MDR-CD900ST、MDR-Z900比較まとめ。定番を揃える安心感を買う

MDR-CD900STとMDR-Z900を比較してみましたが、近い発売時期、似たような形状のヘッドホンでここまで違いが出るとは予想外でした。音を聴いて体験いただきたいところです。

MDR-CD900STは、PVとかでアーティストがよく手をヘッドホンに当てて歌っているように、ボーカルや楽器の録音、ミキシングなど、音を作り上げていく過程では素晴らしいモニターヘッドホンだと思います。

ミキシングの際、一度MDR-CD900STでモニタリングしておくと、定位や音像感、音域についてまず間違いは起こりにくいかと思います。CDという規格が発表されてからずっと親しまれている、「基準」としての価値は大いにあります。

一方、MDR-Z900は、ベースなど低域を聴きならすような用途には最適だと思います。MDR-CD900STとは異なり、良くも悪くもリスニング用途としても向いています。

逆に音楽観賞用途の利用を想定して、MDR-CD900STが所謂「プロのファッションアイテム」と思って購入すると、痛い目にあうかもしれません。

市販の一般的なヘッドホンとは音の再現性の作りが全く違います。あくまでも「モニターヘッドホン」として、正しく利用するならば、MDR-CD900STは現役最高のモニターヘッドホンの一つだと思います。

MDR-CD900STを所有するだけで安心感はありますが、もし可能でしたら一度店頭で試してからの購入をオススメします。

SONY MDR-Z900
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