
RME Babyface Pro FSとIK Multimedia iRig Pro I/Oの比較レビューです。以前個人輸入で手に入れたRME Babyface Pro FSを使って、様々な楽器やシチュエーションでレコーディングしてみました。
RME Babyface Pro FSとIK Multimedia iRig Pro I/Oの価格差は約8万円程度ですが、どれだけ音質に差が出るのでしょうか。比較してみたいと思います。
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RME Babyface Pro FSの機能・特長

RME Babyface Pro FSは12イン/12アウト、24bit/192kHz対応のオーディオインターフェイスです。
babyfaceは2011年に初代モデルが発売され何度かモデルチェンジがあり、10年の歴史があります。
旧モデルはBabyface Proですが、今回「FS」という名前が追加されています。FSとは「フェムトセカンド」の略で、1000兆分の1秒という意味だそうです。
Babyface Pro FSでは、「ジッター」と呼ばれる、周波数の揺らぎで発生する音質の劣化を、1000兆分の1秒の精度で抑えた技術が備わっているそうです。
他にもヘッドホンアンプが最大10dB改善したり、AD/DAコンバーターのSN比が向上したりということだそうですが、乱暴な表現でお伝えすると「過去製品よりも音質が向上した」と言うことになります。
RME Babyface Pro FSのシンプルな入出力

RME Babyface Pro FSの入出力機能は高音質ながらシンプルです。アナログでマイク入力が2つ、ライン入力がサイドに2つあります。デジタルではADATオプティカル入力で24bit/96kHzが4チャンネル、24bit/192kHzが2チャンネルあります。

ライン入力はハイインピーダンス(=高い抵抗にも耐えられる)にも対応しているので、ギターやベースを直接挿して録音することができます。

出力はアナログのXLR端子が2つ、ヘッドホン出力が2つあります。デジタルも入力数と同じ数だけあります。個人の音楽制作環境では必要十分だと言えます。

SN比はマイク入力が113.7dB、ライン入力が116.3dBと、高音質が期待できます。

Babyface Pro FSからPCへの接続はUSBで、PCの電源で動きます。DCアダプター接続も可能ですが、PC電源で全てまかなえるので取り回しも楽です。
ドイツ製ということもあるせいか、USBケーブルはしっかり押し込まないと接続できません。最初、十分接続ができず故障かと勘違いしましたが、信頼度は高いです。
RME Babyface Pro FSのインターフェイス
Babyface Pro FSのマニュアルは約200ページほどありますが、半分がドイツ語なので実際は100ページもなくすぐ読めます。

Babyface Pro FSのほとんどの操作は「TotalMix FX」と呼ばれるソフトで行うため、インターフェイスもシンプルです。

INは入力先の選択、OUTは出力先の選択ができます。
A・Bボタンはあらかじめセットした設定を読み込むことができます。

真ん中の丸い円盤で選択したボリュームやパンを可変させます。
そして左下のSELECTボタンでパラメータを選択します。
DIMボタンは聞き慣れない名前ですが、あらかじめ「TotalMix FX」で設定したボリューム値を一発で読み込むことができます。楽器やマイクを何度も差し替える時に便利だと思います。
SELECTボタンとINボタンを押し続けるとLEDの明かりの強さを調節でき、25% 50% 100%で調節できます。細かい機能ですが、他のオーディオインターフェイスにはない設計者のこだわり、気配りを感じます。
とここまで説明してきましたが、Babyface Pro FSのインターフェイスは、シンプルながら機能豊富ですが、通常の録音は「TotalMix FX」でほとんど賄えてしまうので、使うことはIN、OUTを選ぶ程度で、アクティブに操作することはあまりないと思います。
RME Babyface Pro FSとiRig Pro I/O音質比較
Babyface Pro FSとiRig Pro I/Oで各種パートを録音してみました。各音源は最後のMixを除きノーマライズ以外の加工はしていません。ヘッドホンで聴くと音の違いを感じられると思います。
ベースとエレキギターはダイナミックマイクAUDIX i5で録音しています。
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Babyface Pro FSでBass録音
サーというノイズが入っています。
iRig Pro I/OでBass録音
音質の差はあまり感じないように思います。
エレキギター

Babyface Pro FSでエレキギター録音
音の分離を感じます。感度が鋭いのか、Babyface Pro FSの方は弦を弾く金属音も録れてしまっています。
iRig Pro I/Oでエレキギター録音
iRig Pro I/Oの方が多少もったりした感じがあります。
アコースティックギター

アコースティックギターはコンデンサーマイクAT2020で録音しています。
【実機レビュー:音あり】audio-technica AT2020低価格コンデンサーマイクの高性能に驚くBabyface Pro FSは「TotalMix FX」で48Vファンタム電源をオンにします。iRig Pro I/Oは本体のスイッチをONにします。

Babyface Pro FSでアコギ録音
iRig Pro I/Oでアコギ録音
コンデンサーマイクの精度の影響もあり、ツヤ感に差を感じます。Babyface Pro FSの方は集音レンジが広いせいか、外のセミの音まで録れてしまっています。
シンセ
Babyface Pro FS、iRig Pro I/OともMIDI端子があるので、MIDIケーブルをシンセ音源に接続し、PCであらかじめ打ち込んだMIDI信号を鳴らしながら録音します。
Babyface Pro FSでシンセ録音
iRig Pro I/Oでシンセ録音
Babyface Pro FSとiRig Pro I/Oの音質に大きな違いはないように思います。Babyface Pro FSの方が音が多少分離している印象はあります。
Mix
Babyface Pro FSで録音したパートにドラム音源をプラスし、ミックスしてみました。
楽器のジャンルがバラバラなので、曲としてのまとまりに欠けますが、Babyface Pro FSで録音した音質の高さは感じられると思います。
各パートの編集は今回新たに導入したiZotope RX 8 Elementsを使用し、ノイズカットからイコライジング、コンプレッションなどを行っています。
iZotope RX 8 Elementsは、キャンペーン価格で数千円と低価格ながら音源を読み込むだけでAIが自動でいい具合に調整してくれるので、費用対効果は高いです。
RME Babyface Pro FSの外観

Babyface Pro FSのサイズは、
- 横幅が10.8cm
- 縦幅が18.1cm
- 高さが3.5cm

です。男性が片手で掴める程度のサイズで、机の上に置いても邪魔になることはないと思います。
重さは680gとそれなりにずっしりあり、XLRケーブルの重みで落下してしまうようなことはなさそうです。
また、Babyface Pro FSにはハードケースも付属するので、スタジオに持ち運ぶ時も安心です。
RME Babyface Pro FSの利用シーン

Babyface Pro FSは高音質ながら取り回しが楽なので、自宅やスタジオで楽器を気軽に録音するのに便利だと思います。
実際録音してみて分かったのですが、特にアコギやボーカルなど、コンデンサーマイクを使って生音をできる限り高音質で録りたい人にとって、Babyface Pro FSは有効だと思います。
エレキギターやベースなど、アンプを通してダイナミックマイクで録音する場合や、シンセのように音源を直接録音する場合には、iRig Pro I/OやSteinberg UR22mkIIのような低価格オーディオインターフェイスでも十分高品質でレコーディングできると思います。
しかし、Babyface Pro FSは再生時の音の分離感も優れているので、ミックスをする時にはやりやすいかもしれません。
RME Babyface Pro FSまとめ

Babyface Pro FSとiRig Pro I/Oをレコーディング比較してみましたが、Babyface Pro FSは人気があるだけのことはあり、低〜中価格帯のオーディオインターフェイスとは音質が一つ抜きん出ている部分があると思いました。
ただ、価格面で考えてみた場合、録る内容によってはBabyface Pro FSが価格の差ほど音質が優れているとは思いづらく、Babyface Pro FSが絶対、というわけでもなさそうです。
とはいえ、Babyface Pro FSは製品としても高級感があり、信頼感は高いので、手元に置いておくと頼もしいオーディオインターフェイスであることは間違いないと思います。