UNIVERSAL AUDIO Arrowをチェックしてみたいと思います。UNIVERSAL AUDIO Arrowは、世界中のスタジオで使われているapolloシリーズのエントリーモデルとして登場しましたが、充実のUADプラグインはどこまで使えるのでしょうか。過去の苦い体験と合わせて見ていきたいと思います。
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UNIVERSAL AUDIO Arrowの特徴
UNIVERSAL AUDIO Arrowは、Thunderbolt接続の2イン/4アウトのオーディオインターフェイスです。特徴は何と言っても充実のUADプラグインが使えることで、UNIVERSAL AUDIO ArrowにはUADプラグインが14個備わっています。
- UA 610-B Tube Preamp and EQ
- MarshallR Plexi Classic Guitar Amp
- Precision Delay Modulation
- Precision Delay Modulation L
- Precision Reflection Engine
- Precision Channel Strip
- PultecR EQP-1A EQ Legacy
- PultecR Pro EQ Legacy
- Raw Distortion Guitar Pedal
- Realverb Pro
- Softube Bass Amp Room 8×10
- TeletronixR LA-2A Compressor Legacy
- UA 1176LNR Compressor Legacy
- UA 1176SE Compressor Legacy
といった具合で、UNIVERSAL AUDIO Arrowに備わっているプラグインは、ギターなど楽器のレコーディング向きが多いようです。UNIVERSAL AUDIO Arrowのコンパクトなサイズとマッチしていると思います。
UADプラグイン以外の特徴として、UNIVERSAL AUDIO Arrowには、オーディオコンバーター、2基のUnison™プリアンプが備わっています。この辺りはSteinbergUR-RT2のレビューでも書きましたが、音質については実際にレコーディングして聴いてみるしかないのでなんとも言えません。ですが、UNIVERSAL AUDIO Arrowレベルになると、レコーディング、再生時の音質でガッカリすることはまずないと思います。
また、UNIVERSAL AUDIO Arrowの対応ビットレートは24ビット/192kHzと、もはや標準となったスペックです。
UNIVERSAL AUDIO Arrowもdigidesign Digi001と同じ残念仕様?
ここまで見てきたUNIVERSAL AUDIO Arrowですが、果たして、UNIVERSAL AUDIO ArrowのウリであるUADプラグインは使えるのでしょうか?10年以上前に発表されたdigidesign Digi001を購入した私の過去の苦い体験を話しましょう。
当時、憧れのプロの機材、Protoolsが使えるぞ!と期待して、確か10万円強ぐらいするdigidesign Digi001を購入したのですが、
- ソフトは廉価版のProtoolsLE
- TDMプラグインに非対応
- TDMの代わりにRTAS または AudioSuite というプラグインしか使えない
- TDMプラグインはDSP非搭載のdigidesign Digi001では非動作
- AudioSuiteプラグインはリアルタイムではかけられない
- RTASプラグインは処理が重くて話にならない
といった感じで、digidesign Digi001は、プラグインがまともに動作しない、私にとって残念なオーディオインターフェイスでした。当然ながらスペックも確認した上での購入だったのですが、さすがにある程度はプラグインも使えるでしょう!安くてもProtoolsだぞ!と期待はしていましたが、結構なガッカリ感でした。
結局、プラグインを積極的に使ってレコーディングや波形編集したいDTMユーザーにとって、DSPが充実していないと致命的な訳で、UNIVERSAL AUDIO Arrowも、せっかくのUADプラグインが満足に動作しない可能性があります。
UNIVERSAL AUDIO Arrowの場合、DSPは一基だけ搭載されています。で、一基だけ搭載されているとどれぐらいUADプラグインが動作するか?と言えば、同じ数のDSPを搭載しているApollo Twin mk2のSOLOですと、プラグインはせいぜい5〜6個動くかどうか?といったところです。ギターの単音録りならなんとか対応できると思いますが、本格編集には役不足だと思います。
Universal Audio apolloシリーズに搭載されているDSP、Sharkチップとは?
UNIVERSAL AUDIO Arrowには、Universal Audio apollo Twin mk2シリーズに搭載されている”Shark”と呼ばれるDSPチップが搭載されているかどうか明確に記載されていません。ということは、Sharkよりもスペックが劣っている可能性があります。
“Shark”という名前はUniversal Audio製品だけでなく、ギターの高級エフェクターの代名詞、Fractal Audio SystemsのAxe-Fx II XL+も搭載されていたりとよく聞きますが、これはAnalog DevicesというメーカーのDSP(デジタルシグナルプロセッサ)チップで、32ビット、40ビットという高いビットレートの処理で、複数のリアルタイム演算を得意としています。製品の種類は40種類ほどで、マランツなどの高級オーディオ機器にも使われるなど、オーディオ系の処理で使われていることが多いそうです。
Fractal Audio Systems Axe-Fx II XL Plus
digidesign ProtoolsのTDMプラグイン同様、UADプラグインでも、高級ビンテージ機材を細かく再現するようプログラミングされているため、多くの処理が行われます。おそらく、この数年間、ソフトウェアレベルでは、処理速度といった点で大幅な進化はなく、そのため、DSPへの依存度合いは今も昔も変わらない。なので、DSPが複数搭載された機材は現在も高価なままなのかもしれません(勝手な推測ですが)。
UNIVERSAL AUDIO Arrowの外観
UNIVERSAL AUDIO Arrowの外観は濃いグレーのオールメタルの筐体です。弁当箱のような形で、下側の左にギターなど楽器のインプット、下側の右にヘッドホン端子があります。上側にマイクINとアウトプット端子があります。
UNIVERSAL AUDIO Arrowは角が丸っこいのと、ボタンやツマミがグレーのプラスチックのようなので、高級感がイマイチ欠ける印象を受けてしまいますが、手のひらに乗るぐらいのサイズ感なので持ち運びしやすいと思います。具体的な重量はデータがありません。
UNIVERSAL AUDIO ArrowはThunderbolt 3接続です。MacBookはUSB Type-Cですが、Thunderbolt3ではないのでMacBookでは使えないので注意が必要です。また、Thunderbolt3ケーブルは別売です。
UNIVERSAL AUDIO Arrowまとめ。UNIVERSAL AUDIO ArrowでUADプラグインを体験した後は、高級機を買おう!ってコト!?
UNIVERSAL AUDIO Arrowについて色々チェックしてみましたが、過去のdigidesign Digi001が最悪な例で、高級レコーディオングシステムの入門者向けオーディオインターフェイスには、個人的にあまりいい思い出はありません。
ですので、いくらCPUパワーが過去よりも上がっているとはいえ、UNIVERSAL AUDIO Arrowもぶっちゃけどうなんだろう?と疑問に思います。UADプラグインを本気でフル活用したい方は、予算の許す限りUniversal Audio Apollo QUAD、せめてDUOにしましょう。UAD-2 SOLOはUAD-1の約2.5倍、DUOは約5倍、QUADは約10倍の処理能力だそうです。複数チャンネルでの本格的な波形編集を行うには、経験的に最低40個程度プラグインを軽く立ち上げられるぐらいでないと、本領を発揮できないと思います。
私のリスペクトする藤本健さんの記事によると、
Arrowは多彩なことができるため、少し難しく感じる面もあるかもしれません。しかし、Arrowに慣れてしまえば知らず知らずのうちにプロの世界でも通じる知識が身につくと同時に、いい音での音楽制作が可能になります。そう考えると、初期投資は多少掛かりますが、結果的にワンランク上のものを、安く、そして手軽に入手できる手段といえるのではないでしょうか?
とおっしゃっています。確かに「知識」は身につきます。UNIVERSAL AUDIO ArrowでUADのプラグインを体験してみよう!という目的なら、UNIVERSAL AUDIO Arrowで全然いいと思いますが、後でストレスを溜めて買い直すことが予想されるので、慎重に選んだ方がいいと思います。メーカー側も「本気で使いたければ上位版買ってね」ってスタンスなんじゃないでしょうか?正直微妙。